嬉しいとき 悲しいとき 苛々しているとき
元気なとき 疲れて眠っているとき おなかが痛いとき
ただ ぼーっとしているとき
君はいろんな時間を共にしてくれた
楽しいことが待っている旅先へ
緊張しながら向かう会場へ
君はいろんなところへ一緒に来てくれた
黒々としたぶ厚い雲が空を覆う日 どしゃ降りの雨に打たれても
真夏の炎天下の日 灼熱の陽射しに照り付けられても
真冬の凍えそうな日 いてつく風に吹かれても
君はそんなのものともしなかった
感情に任せてやつあたりしたこともあった
無理をさせたこともあった
ひもじい思いをさせたこともあった
汚れたまま放っておいたりもした
さらにはトラックにぶつけてしまったこともあったけれど
君は文句一つ言わず、ただひたすらに走ってきた、私を乗せて。
そんな君は、
1993年式、走行距離13万kmの私の白い愛車。
私が今乗っている車は結構古くて、私が中学生の頃から我が家で使ってきたものです。いろいろな事情が重なって、私が家から独立するときに予定外ながらも私についてきてくれた(つれてこられた?)かわいい車なのです。そう、先ほどから、こちら側からのかなり勝手な解釈による表現がなされていますが、もしかしたら彼(なぜか私の中では男性です)に言わせてみれば、「乗られたら嫌でも時間は共有する! 一緒に行かされたんだ! そんな日に走らせるから… 文句言えるんなら山ほどあるぜ!!」かもしれません。
そんな彼なのですが、昨年左右の窓を傷めてしまい、二度ほどカーディーラーに日帰り入院いたしました。パワーウインドウのワイヤー損傷との診断を受け、10年以上の酷使に耐えかねた結果なので仕方なかったとのことでした。お蔭様で窓はすっかり直ったのですが、そろそろかな…と私は買い替えを意識し始め、次なる車を探すようになりました。一車種気に入ったものが見つかりましたので、見積もりなどもしてもらって着々と買い替えの準備を進めていきました。これまで乗ってきた車はもともと家族で使っていた車で、普通のセダンタイプでしたから、決してお洒落でもなんでもなく、パワフルでもなんでもない。だから次こそはかっこよくて馬力のある一台を、と思って買う気満々になっていました。
しかし、私が手放した後、この車は…。古すぎて、きっともう一度市場にでることはないだろう…。
その後を思うと居た堪れなくなりました。まだまだ走る。風を切ってどこまでも走る。エンジンも必ず一発でかかる。エンジンの音は少しうるさいけど、加速だって実にスムーズ。エアコンもよくきく。手になじむ古びた皮のハンドル。室内のいつものあの匂い。慣れた車幅感覚。こんなことを言うとなんだかかわいそうですが、だいぶ古いので万一ぶつけても(万一の「一つ」はもうぶつけてしまいましたが(苦笑))惜しげがないからとても気楽。でも、それより何よりいろいろな人といろいろな場所へ赴いた、たくさんの思い出があの車にはしみついている。私のいろんなことを知っている。
もうちょっと乗っちゃうか
愛着、というのがこれなのでしょうか。あの古い車が、かっこよくもないしパワフルでもないあの車が、なんだかとてもかわいく思える今日この頃です。みなさんは、何か愛着のある物をお持ちでしょうか。物に対して情を入れて大切にずっと使っていくということは人間にしかできないとても素晴らしいことだと思います。
この何十年かはとかくいろいろな物が使い捨てにされてきた時代でしたが、近頃はリサイクルが盛んに叫ばれるようになりました。物への愛着が、リサイクルなどと共に少しは環境へのやさしさにつながらないだろうかと思ってみたりします。…そんなことを言うのなら車に乗らずに排ガスを減らせ、ということにもなりますか(苦笑)。
今日も君は風を切ってひたすらに走る、私を乗せて。
そんな君は、
1993年式、走行距離13万kmの私の白い愛車。
さあ、あと何km一緒に走ろうか。
余談ですが。
実は、1992年式(推定)、走行距離不明のもう一つの私の愛車がありました。親に買ってもらった通学用自転車!今年で15年目に突入でかなり傷んでいながらも、いまだ現役です。でも、最近あまり乗らないからすっかり忘れてた、ごめん!!
今度晴れたら、また一緒にご近所探索しよう。
2006.7.27 グリーン歯科クリニック 歯科医師 上田祥佳